概要
著作権がどのようなものであるかは、最初に説明しました。
ここでは、著作権を取り扱う法律が、具体的にどのようなものであり、何を規定しているのか、詳細に説明していきます。
歴史
日本では、近代になる前までは、著作権に相当する概念が存在しなかったとされており、著作権の歴史は、1899年にベルヌ条約に加盟したところから始まります。
ベルヌ条約への加盟に伴い、国内法の整備の一環として、はじめて著作権法が制定されました。この著作権法は、「旧・著作権法」と呼ばれるもので、1970年に制定された「新・著作権法」とは区別されます。
国際法のおもな流れは、以下の通りです。
- 1886年
- ベルヌ条約の締結
- 1893年
- 版権法の制定
- 1899年
- 著作権法の制定(版権法など、関連の旧法は廃止)
- 日本がベルヌ条約に加盟
- 1931年
- プラーゲが音楽著作権の使用量を要求
- 1970年
- 新・著作権法の制定
著作物として保護を受けるものの対象は、著作権法(2章1節)にて定められています。
- 小説、脚本、論文、講演、その他の言語
- 音楽
- 舞踊または無言劇
- 絵画、版画、彫刻、その他の美術
- 建築
- 地図または学術的な性質を有する図面、図表、模型、その他の図形
- 映画
- 写真
- プログラム
著作物に当たらないものとして、以下があげられます。
- 事実の伝達に過ぎない、雑報および時事報道
- ブログラムを作成するためのプログラム言語、規約、解法
- 二次的著作物(既製のものを模造したものなど)
- 編集物(ただし、創造性を有する場合は保護される)
権利の目的とならない著作物(自分のものであると主張できませんよ、ということです)として、以下があげられます。
- 憲法、その他法令
- 国もしくは地方公共団体、独立行政法人などの告示、訓令、通達
- 裁判所の判決、決定、命令および審判
- 以上項目に関する翻訳物や編集物で、国などが作成するもの
著作者とは、日本の著作権法上でいうと、「著作物(作品)を創作する者」を指します。たとえば、文学・芸術などの作品制作者、音楽家、テレビのプロデューサー、アニメーションや映画の監督などです。
著作者は、著作物を創作すれば即時に、いかなる手続きも必要とせずに、著作権と著作権人格権を取得したことになります。
著作権は譲渡することができ、譲渡によって著作権を得た者を、著作権者と呼び、著作者と区別するようになっています。
また、複数の者が共同して創作した著作物のことを、共同著作物と呼びます。この場合、捜索に関与した全員が著作者となり、著作権を準共有することとなります。
また、企業の従業員が、職務として捜索を行った場合に、著作権が、創作者個人に帰属することになると、複雑な問題に発展する可能性があります。そのため、一定の要件を満たした場合は、創作者個人ではなく、企業そのものが著作者となり、著作権を取得するという制度が定められています。
これを、職務著作と呼びます。
著作権は、原則として、著作者の死後50年を経過するまで保護されます。
著作者が無名もしくは変名で著作物を発表した場合には、著作者の死亡時を知ることが困難なため、公表後50年を経過するまで保護されます。
これは、世界160ヶ国が締結している「ベルヌ条約」において、以下のように定められていることに関係します。
- 著作権の発生要件は「無方式主義」とする
- 著作権の保護期間は「著作者の生存期間および著作者の死後50年」とする
ベルヌ条約は、日本も加盟しているため、同規定としています。
実名の登録(実名登録)とは、実名を名乗らずに著作物を発表した著作者が、別途、実名を登録することができるという制度のことです。
実名を名乗らずに著作物を発表した場合には、実名を名乗った場合よりも、著作権の保護期間が短くなるという特徴があります。
そのため、実名を登録することで、実名を名乗った場合と同じ期間だけ、著作権の保護を受けることができるわけです。
実名登録による利点として、大きく3つあります。
- 著作者の推定
- 保護期間の延長
- 発行者による著作権行使の排除
また、本当の著作者ではない人間が、著作者として実名登録されているような場合、真の著作者著作権者が、登録の抹消を請求できるという、高等裁判所による判決もあります。
氏名表示件
著作者は、著作物を公表する際に、実名・ペンネームなどの変名・著作者名を表示しない(無名公表)など、好きな名前を表示できます。
この権利を、氏名表示件と呼びます。
実名ではない名前により著作物を発表した場合は、生存中の70歳の時点で、著作権の保護期間が満了してしまいます。